米をめぐる政治:米は「権力の礎」、米は「政策の軛」 ― 水田国家日本の構造的危機
――米は「権力の礎」であり続けたのか、それとも「政策の軛」となったのか――
2024年以降に顕在化した米価の不安定化や食料供給への懸念は、単なる一時的な市場変動ではない。それは、古代から現代に至るまで連綿と続いてきた日本国家と米との関係性が、制度的限界に近づきつつあることを示している。
本書『米をめぐる政治:米は「権力の礎」、米は「政策の軛」―水田国家日本の構造的危機―』は、政治学・歴史制度分析の視点から、日本の米をめぐる統治構造を二千年という長期時間軸で再構成した体系的研究である。
本書が明らかにするのは、米が単なる農産物ではなく、国家権力を支える基盤として機能してきという事実である。律令国家の租税体系、近世の石高制、近代国家の地租改正、戦後の食糧管理制度に至るまで、米は一貫して国家の財政・軍事・統治構造の基盤を形成してきた。 一方で、その重要性ゆえに、米は常に政府による強い制度的介入の対象ともなってきた。農村社会の自律性は歴史的に制約され、統治と供給をめぐる制度的枠組みは長期にわたり蓄積された。その結果として形成された構造は、現代において生産力の低下、担い手不足、食料供給体制の脆弱性として顕在化している。 本書は、これらの問題を単なる個別政策の失敗としてではなく、「国家と食料」「統治と生産」という構造そのものの帰結として分析する点に特徴がある。
さらに著者は、現代日本の課題を以下のような相互に連関した構造として提示する。
・生産抑制を前提とした制度設計の限界
・食料安全保障をめぐる国際環境の変化
・土地制度の硬直化と担い手不足
・都市化と農村共同体の構造的変容
これらは個別問題ではなく、長期的な制度史の中で相互に結びついた構造的帰結であると位置付けられる。
著者の結論は明確である。今日の日本においては、食料安全保障の確保、国際的な市場環境の変化、そして地球温暖化をはじめとする環境変動の下で、生産抑制を前提とした既存の制度設計のままでは、消費者への安定供給と持続的な生産基盤の維持はもはや成立しない。
食料安全保障、土地制度改革、担い手の再構築、地域社会の再生。これらは個別の課題ではなく、日本の農業の持続可能性そのものに関わる構造的課題である。
本書は、政治学・歴史学・政策研究の視点から、日本社会の基盤を問い直す一冊である。
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